ー 10月24日 ー
パリにいる間にどうしても見たいものがあったため、
今日は片道4時間以上という、かなりの長距離日帰りプチ旅行を決行することに。
全てを含めると往復の移動だけでなんと半日近くもかかってしまう。
しかも交通費は往復一人約1万円。
それでもそれだけはどうしてもこの目で見てみたかった。
それはみほさんが教えてくれた、辺鄙な田舎町にある小さな教会。
ノートルダム・デュ・オー礼拝堂(Chapelle Notre-Dame du Haut)。
日本ではロンシャンの礼拝堂と呼ばれている、
フランスの超有名建築家ル・コルビュジェが晩年に設計したものだ。
元々巡礼の地であったロンシャンには中世に建てられた礼拝堂があったのだが、
第二次世界大戦の際に、ナチス・ドイツの空爆により破壊。
戦後、ロンシャンの人々は再建を願い、アラン・クチュリエ神父の推薦により
ル・コルビュジエに設計が依頼され、1950年に設計が始まり、1955年に竣工した。
前に雑誌BRUTUSの建築特集でこの写真を見た時にやたら印象に残っていた礼拝堂。
いつかはこの目で見てみたいと思っていた。
前はただ漠然とそう思っただけで、特にどこにあるかも調べてなかったのだが、
まさかみほさんが一番好きな礼拝堂といって教えてくれた礼拝堂がこれだとは驚いた。
教えてもらった瞬間に決定した日帰りプチ旅行。
ただちに行き方を調べ、出発は大体朝の9時頃にした。
まずはLure行きの列車に乗り、
そこから各駅停車に乗り換えてロンシャン(Ronchamp)へ。
ここまでで約4時間。
ロンシャンの駅はとても小さな無人駅だった。
いや、むしろもう駅というかただのちょっとした歩道橋のある田舎の道だ。
辺りには人気もなく、家が見えたとしてもただのゴーストタウンにしか見えない。
あれ、マジでここであってるかな、、、
ここからはタクシーで礼拝堂へと向かう予定なのだが、
タクシーなんか通らないのは明らかだった。
ん~、とりあえず昼飯でも食おうか。
ネットで目星をつけていたパン屋もやっていなかったため、
唯一開いていたケバブ屋で昼食をとることに。
お客さんはもちろんうちらだけ。
近くに見えたホテルもとても人が泊まっているようには見えなかった。
礼拝堂がなければ100%来る事のない町。
ひとまずケバブを頼んで腹ごしらえを済ませると、
ダメもとでこの辺でタクシーを呼べるかを聞いてみた。
タクシーか~、と頭を悩ます店員のお兄さん。
そうですよね、そりゃないっすよね。
もう聞く前からないのは分かっていたが、これはやっぱりない様子。
まぁ歩いても30~40分で着くって書いてあったし、ここは歩いて行こうかとすると
「俺が車で送っていってあげるよ」と言ってくれるお兄さん。
マジっすか!!
まさかの優しすぎるお誘い。
もうホント感謝の気持ちでいっぱいで、
ひたすらメルシーメルシーと言いながら車に乗せてもらうことにした。
お兄さんの車に乗り込み、トンネルを越え坂道を駆け上がる。
周りは森に変わり、微妙に紅葉が始まっている木々が奇麗だった。
10分もしないうちにたどり着いた駐車場も美しい景観の中にあり、ますます高まる期待。
礼拝堂の入り口にたどり着くとそのままお礼を告げ、
去っていくお兄さん。
こういう時にお金以外で感謝の気持ちを表せるものがあったりするといいんだけどな。
お金を渡すのは違う気がするし、かといってサッと渡せるようなものを持ってるわけでもない。
この時はただメルシーという言葉を何回も言うだけしかできなかった。
受付のおばちゃんに入場料を支払い国籍を聞かれたので「JAPAN」と答えると
あなた達の前に来た人達も日本人ばかりよ、と教えてくれた。
こんな辺鄙な所にある礼拝堂だがどうやら日本人には人気らしい。
おばちゃんに帰りのタクシーをお願いしてから早速受付を抜け、
坂道を登ると、緑の奥にそれが見えた。
真っ白な有機的な形をした壁に、牛の角のように飛び出したグレーのコンクリート。
緑の芝生の上に建ち、青い空に映える白とグレーのコントラスト。
なんともいえない奇抜な形に、無造作に幾つも空けられた四角い窓。
見た瞬間に、
あ~、これ好きだわ。
と思った。
図工の時間に子供が作った粘土がそのまま形になって生きているような、
素朴で、純粋で、どこか居心地が良い。
来て良かったと心底思った。
これを見ずにパリを出ていたらと思うと恐ろしくなる。
しばらく外観をボーっと眺めてから、礼拝堂の中へ。
誰もいない静かな空間に、
幾つも空けられた四角いステンドグラスから光が漏れていた。
はい、一番好きな礼拝堂に決定。
こんなにも衝撃を受けたのはサグラダファミリア以来だった。
空間、景観、形、色、空気
全てが美しすぎる。
最初は礼拝堂の設計に前向きではなかったコルビュジェが
この地に来て設計を引き受ける事を決めたというのが頷けた。
この場所だからこそ、この礼拝堂が出来たに違いない。
全てが素敵すぎる。
しかもこの空間を二人で独占出来る事が幸せで仕方なかった。
いつまででもいたくなるような心地いい空間。
広い訳じゃないのに気づいたら2時間以上も滞在していた。
十分礼拝堂も空間も満喫した後は、5時くらいに迎えにきたタクシーに乗り
Lure駅へと戻ってまた4時間かけてパリへと戻った。
それでは写真のハイライトで。
ロンシャンの町
礼拝堂の周り
礼拝堂
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